雑駁一瞥近代日本文学史・1

 高2国語の授業計画を作り始めています。来年度国語担当の諸先生とまだ連絡を密にとってはいない段階なので(最初にやる教材は決めてありますが)、暫定的なものですが、時間さえあれば、これは楽しい作業です。


 さて、現代文は2学期に夏目漱石『こころ』、3学期に森鷗外舞姫』を、古典では3学期に『源氏物語』桐壺巻を学ぶのが城北での一般的な流れです(世間的にも『こころ』『舞姫』は定番中の定番ですが、定番教材は、批判も組み込んだうえで、ある程度きちんとやった方がいいと私は考えています)。この学年も、中1から私たちなりに考え、新旧交えて教材を積み上げてきましたが、ついに漱石と鷗外までたどり着くかと思うと、感慨深い。そんなことをつらつら思いながら、定番以外の教材をこれにどう組み込んでいくかをさらに考えているのですが、あれもやりたいこれもやりたい。でも週2時間だとなかなかできない。そこで授業とは別に、どうせならこの場で、近代以降の文学史をものすごく大雑把に示しながら、読書案内にもなるようなことができないかと考え始めました。
 厳密さを追求するものではないので、あまり目くじらは立てないでほしいのですが。同業者や文学ファンが見たらびっくりするぐらい、大雑把な見取り図しか描かないつもりですが、大きな流れだけでもまずは知ることが大事かと考えています。とりあえず数回に分けて、やってみましょうか。


1 明治維新〜「近代」がやってくる! 
明治維新。江戸の文化が否定され、西洋の文化が入り込んでくる。
・西洋の思想や小説を翻訳した翻訳小説や、西洋の政治思想を反映した政治小説などがなされる。
▽いきなり翻訳小説などここで薦めたりはしません。ただ、小説ではないけれど、福澤諭吉学問のすすめ』は、20歳ぐらいまでに岩波文庫で一度は読んでほしいかな。漢文をある程度やってきているので、それなりに読めるはず。
 思っているより短いし、それでも長いと思うなら最初の数篇だけでもいい(別に買った本の全編を読み通そうとしなくたっていいのだ)。福澤の、平易な文章を用いながらきちんとした(当時なりの)リベラルを語ろうとして成功している、その凄さに触れることができるのではないでしょうか。こんなざっくりとした説明だと慶應関係者が怒りそうだ。
 一橋大では全3題のうち1題、擬古文が出題されます。その練習としても良い。

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

 齋藤孝ちくま新書で、「現代語訳 学問のすすめ」というのを出した(未見だが)。齋藤孝の意図と気持ちもよくわかるが、本校ぐらいの国語の水準からすれば、やっぱり原著を読んでほしい。慣れればそれほどきつくない。