文学研究の老舗たる某誌のバックナンバーをネットで確認していたら、そこに執筆している研究者の肩書として「大学教授」「非常勤講師」「博士課程」に並んで、「会社員」というのがあった。
 ついにそういう時代になったか。理系はまだしも、文系の学問、それも文学といった実学と見なされていない学問は、国や大学からの援助も少なくなり、全国的に危機的なまでに縮小傾向にある。お金が減るので、ポストも減る。激減である。学部自体が無くなるケースも多い。知り合いの30代、40代の研究者で、「これは!」と思う有能な方々も、博士課程を出てPDになり、学振も切れ、しかしポストが空かずに非常勤講師のままという方ばかりだ(もちろん志が高いので愚痴など言わない。立派だと思います)。それにしてもついに「会社員」か…。
 といっても、多くの雑誌はむしろ、大学や研究機関に所属していなければ肩書を載せないものなので、見えにくいだけで実態としてはそういう人は少なくないのかもしれない。


 ただこの件、別にネガティヴなハナシではないのかもしれない。きちんと手順を踏めば載せてくれる雑誌や場はあるのだから(もちろん暗黙の了解によって載せてくれない雑誌も間違いなくあるだろうが)、ポストだけを求めて汲々としがみつくよりは、会社員なり主婦なりの立場で生活はきちんと立てながら、一方で研究を続けようというスタンスかもしれない。研究施設や実験器具が必ずしも必要でない学問だから、これは可能といえば可能なのだ(それでも大学に所属していないといろいろな面で不具合や不自由、不都合がある。実体験による)。そういう前向きな姿勢ならそれもアリなのだろう。もちろん、それはそれで、ものすごく大変なことなのであるが(これも実体験による)。