太宰治「さよならを言うまえに〜人生のことば292章」(巖谷大四編)

さよならを言うまえに (河出文庫)

さよならを言うまえに (河出文庫)

 夏休みになにかおもしろそうな本はないかと、祖母の家で物色していたら祖母が「読む?」と差し出してくれた本。自分自身、太宰治をあんまり読んだことないのに、カバーに「太宰文学のエッセンス!」と書かれた本を読むのは少し気が向かなかった。が、いざ読んでみたら違った。300ページ弱のラノベを1冊読むのに2日程度かかる男が、250ページほどのこの本を半日で読めるぐらいすらすら読めたりするほど楽に読める。
内容は、初めの一つと最後の二つの短編以外はタイトル通りに基本5~6行程度の太宰の言葉が並んでいるという形式。・・・・「論語」・・か?
その太宰の言葉というのも他の小説や評論から引用したもの。・・・・論・・語だ。
「人生」や「愛」、「教養」のようにテーマごとに分けられている。・・・・うん、「論語」。
これだけ「論語」「論語」と編集者に申し訳ないようなことを言ってきたが、この本のメインである太宰の言葉自体は共感できるものが意外に多い。一番最初の言葉が「生れて、すみません」という最初からクライマックス的な展開から始まってしまうが、あとは初めのヤツに匹敵するぐらいのネガティブな言葉以外「確かに」と思えるものばかり。中には「私は故郷に甘えている」とか「教養のないところに幸福無し」などとそれなりにかっこいいこともある。
40年以上前の作品を文庫化したものだが、今では新装新版されているらしい。ぱぱっと読みたかったり、論語のような格言のようなものが好きだったりする人にオススメ。 【でっていう】