雑駁一瞥近代日本文学史・8

8 新思潮派(新現実主義)★
・時代はやや下り、大正〜昭和初期。
・東大系の雑誌『新思潮』★がベース。理知的な作風。とにかくキーワードは「理知」。
・代表者は芥川龍之介。あと菊池寛。昭和2年、芥川は自殺するが、これは文学史的には「大正の終わり」の象徴である。


a 芥川龍之介
 「鼻」★を『新思潮』に載せたら、夏目漱石が激賞。鳴り物入りでデビューすることになる。
 初期は古典を題材にとりつつ、巧みな換骨奪胎で近代小説に仕立て上げる。『地獄変』★や、『羅生門』など。
 後期の代表作は、『河童』★、『或阿呆の一生』★。


b 菊池寛
 文藝春秋の創設者。「父帰る」★、「恩讐の彼方に」★など。

▽芥川が典型的な芸術肌であるのに対し、菊池寛は通俗小説の方向へと進むが、菊池寛の短編の切れ味はなかなか捨てがたいものがある。「形」を授業で確かやりましたね。あと、この学年はやりませんでしたが「入れ札」という短編も城北では取り上げることがあります。
▽芥川「羅生門」は高1の定番教材。ただし、本当に初期芥川が良いかどうかは、実は小説読みたちのなかでは賛否両論あります。城北では「羅生門」はほとんどやりませんね。(あえてやる年もあるようですが) この学年は、中3のとき、あえて『今昔物語集』の恵印僧都の話と、芥川の「龍」という短編とを比較して、芥川の「限界」について考えてみたりしたのも懐かしい思い出です。
 私の好みは『河童』ですかね。とても危うくて、とても良い。

河童 (集英社文庫)

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