森見登美彦四畳半神話大系』がアニメ化され、時折生徒から感想を求められるのであるが、とりあえず第9話まで見たかぎりでは、小説の「ここが面白い!」という部分が、残念ながら作品として反映されておらず、残念に思う、というのに尽きる(作画や効果などはたいへんよい)。


 むろん最終の10話、11話を見ないかぎり結論を述べるべきではあるまいが、しかしあえて述べれば、それぞれの未来の「可能性」の結末までを追求してから(時間を遡らせるなら)時間を遡らせないと、一番フォーカスを当てるべき明石さんとの関係を描く部分が深まらないではないか。明石さんにのみフォーカスをあてることを避けるふうであるのは、おそらくは凡百の「萌え」アニメに堕さぬような志によるものなのだろうが、その志は別の箇所に発揮すべきように思われる。
 むろん原作を改変することは厭うべきではない。その点は評価されてよいけれど(ただ原作をなぞるだけのアニメ・ドラマが実に多いこと。なぞらない部分があったかと思えば、ただあれこれの制約を回避するためだけのものだったりする)、小説の『四畳半神話大系』をもっともSFたらしめ、<小説>たらしめている部分(あえて述べないが)が、アニメではすっぽり抜けてしまっているのが惜しいのである。
 そういう意味で、もしアニメ版「四畳半神話大系」を観ている生徒がいれば、ぜひ小説の方も読んでほしい。読書といえばラノベしかしらない向きにも森見作品はお勧めである。*1


 なお付言するが私はアニメオタクではない。

*1:夜は短し歩けよ乙女』あたりはテレビドラマ化されそうな気もするが、作品として<小説>しているのは明らかに『四畳半神話大系』である。『四畳半神話大系』をドラマ化したらそのテレビ局には拍手を送りたい。