芥川つながりで、芥川賞作家の作品に触れたい。
なお、いうまでもないが芥川賞を創設したのは、芥川の旧友・菊池寛。純文学の登竜門として揺るぎない地位を占める名誉ある賞である。
芥川賞受賞者一覧を見ると、生き残ったり路線変更したり消えたり物故したり、その行く末はさまざまであるが、そのなかから私ごのみの作家の作品を3本紹介いたしましょう。

絵具屋の女房 (文春文庫)

絵具屋の女房 (文春文庫)

最近のエッセイから1冊。私の丸谷才一体験は、丸谷『忠臣蔵とは何か』のパロディである清水義範「猿蟹合戦とは何か」を読んだことから始まる(清水義範に中学生のころハマったのである)。当時の清水も絶賛する丸谷の軽妙洒脱・融通無碍のエッセイに手を取った。きっかけなんてそんなものである。
ただし、丸谷の知性の融通無碍さをおもしろがるためには、かつての知的ヒエラルキーの在り方を踏まえていなければならない。けれどいま、かつての知的ヒエラルキーは(良くも悪くも)崩壊しているからな…。丸谷の何が融通無碍なのかが、逆にわかりにくい時代になっているともいえます。
博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

ベストセラーになったし映画化したので、ここではくだくだしく申しますまい。静謐の小説。なお、私が数年前の持ち上げた学年で、ベストセラーになる前に読書感想文の課題にしたという私の目利きぶりは特筆に値する(自分でいうな)
アイ・ラブ安吾 (朝日文芸文庫)

アイ・ラブ安吾 (朝日文芸文庫)

荻野アンナの小説はグッとこないのだが、この坂口安吾に関する評論(?)にはグッときた。正直中3には早すぎるが、丸谷と同じで、こういう料理の仕方があるのか、とは思ってもらえると思う。小難しい顔して分析するだけが批評ではないのだ。数年後にでも読んでください。
次回は、逆に「芥川賞には見る目がない!作家」特集。