夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

ネタバレ:あり

【ここまでのあらすじ】森見登美彦は担任の大好きな作家の一人だと聞いたので、試しに「四畳半神話大系」を読んでみた。偏屈で他者の反論を寄せ付けないような文章(?)に惹かれた私は二作目「夜は短し歩けよ乙女」に手を出した・・・。

【あらすじ】サークルの後輩に恋をした先輩は、数学的確立を凌駕する回数の偶然を装って、後輩に(偶然の)出会いでアタックするが当の本人は「奇遇ですね!」。彼女にアピールできるならば、夜の街で池に落ちても、古本市で彼女のお目当ての本を膨大な本の山から探し出しても、大学祭で劇の主役に勝手になってヒロインの彼女を抱きしめても・・・。けれども、全く振り向いちゃくれない。そして、最後に竜巻の中(!?)で二人は出会う。その後、今まで消極的外堀作戦を続けてきた先輩は、遂に積極的お誘い作戦に切り替える。見事、先輩はデートへのお誘いに成功する。今、ようやく二人の恋は始動する!(竜巻の件が結構、重要である。)

○所感 
語りが先輩→彼女という繰り返しになっていたのに驚いた。常体と敬体の相互作用が心地よく投合し、二人のパラレルワールドによって、読者の世界観の幅が格段に広がったと思われる。また、先輩のへたれキャラと後輩の天然キャラが絶妙にマッチし、まるで漫才を見ているようだ。とりわけ、自分のお気に入りの場面は、後輩の女の子が、学園祭で緋鯉のぬいぐるみを背負っている場面であり、巻末の解説にその絵が書いてあったので、見てみると、イメージ通りである。
ところで、先輩は後輩のどこを好きになったのだろうか?―それは、知りません。(いわゆる、一目惚れという心理現象に理屈など当てはまらない。)だが、ひとつ言えることは大学内で繰り広げられる恋愛模様というのは、構内が広い分だけ、出会った時の喜びもまた大きいということだ。(二度目以降の偶然の再会なら、なおさらである。)大学に入る目的は恋愛することではないけれど、「健全な交際ならいいんじゃないんでしょうか?」と、ふと思う自分なのであった。(大学に入る目的:勉学はもちろん・サークル活動・部活動・研究・卒論・就職活動・立派な大人になるため・己のため・・・・・・etc)

○四畳半との相違点・共通点
四畳半と決定的に違うところは、四畳半で駆使されていた、コピーアンドペースト部分がなかったことであり、物語の軸は単調に流れている様相だ。
一方、共通点は、キャラクターや設定と言える。登場人物や出てくる地名・書店などは同じものが多く、四畳半を知っている者が読めば、きっと言い知れぬ親近感が湧くはずだ。(アニメまで見ていれば、なおさらだ・・・。特に、樋口さんと羽貫さんが!)

○総括
これにて、京都を舞台にした小説を二本続けて読んだことになり、京都を愛する気持ちが生まれたので、次は「鴨川ホルモー」かな?と思うのであった。【醤油ひとさしの格差】