東野圭吾『魔球』

魔球 (講談社文庫)

魔球 (講談社文庫)

 
※ネタバレ注意
 四月のある早朝に堤防沿いの道で開陽高校野球部の捕手北岡明が刺殺死体となって発見される。そしてその死体のそばには奇妙なことに愛犬の死体が横たわっていた。すぐに捜査が始まり捜査対象として野球部の投手須田武志が挙がった。須田武志は剛速球を投げる天才投手として有名であった。しかしその須田武志が何と林の中で同じく刺殺死体となって発見されてしまう。しかも右腕は切断されており、死体の右の地面には小枝で「マキュウ」とかかれたものが残されていた。この野球部員の殺人事件を解決していく中で爆破事件や誘拐などの別の事件が起こる。これらが様々な伏線となっており次第に事件の謎が解決されていくところにおもしろみを感じられる。実はこれらすべての事件は須田武志が計画し、実行したもので、武志が貧しい家庭で育ったが故にお金への執着心が強勝ったために起こしてしまい、これには一人で育ててくれた母や弟へのすさまじいおもいがあったのだなあと思った。話が進むにつれて武志のさまざまな思いが明らかになっていき、また最後には自らが死んでしまうという結末はとても深い理由によって起きたことなのだということを読み終えて感じさせられた。【熊沢】