カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

 *ネタバレ注意
私はこの夏休みに森絵都さんが書いたカラフルという本を読み、その感想を書こうと思う。
この本は、生前の罪により輪廻のサイクルから外された主人公の魂が自殺を図った少年の体にホームステイし、少年として過ごして行くうちに家族や友人の欠点や美点が見えてくるという話である。
まず第一に良いと思ったのは、家族に対する評価が第三者から書かれている点である。普通の家族をテーマにした小説では主人公視点の考えしか描かれていない。しかしこの本は最初に第三者からの評価が書かれており、主人公がその評価を頼りにしながらも自分なりの家族像を見出していく姿には新鮮味があり興味深かった。
次に人の一面性を色と表現したのには感嘆した。人に対して「黒か白か」とはよく使われる表現だが、人はそんな単純なものでは無く人それぞれの見方によってその人のキャラクターは決まる。それを人はさまざまな色を持つカラフルな存在と表したのには納得し、同感した。
この夏休みに私はたくさんの書籍に触れたが、その中でも本作は秀逸なものに思えた。【坂上