河童 他二篇 (岩波文庫)

河童 他二篇 (岩波文庫)

古典を題材にした近代作品といえばまず芥川が浮かぶのであるが、
実は個人的には、あまり芥川龍之介は好きではないのです。
というより、「芥川神話」と呼ぶべきものが好きではなくて、
芥川を読んで、「これが文学だ」とは、あまり思わないほうがよろしい。
とはいえ好きな作品もある。紹介するに足る王朝ものは「地獄変」。
ただ、いろいろな理由で「地獄変」の紹介は後回しにし、
ここでは芥川のイメージを更新してほしいので、
「河童」を挙げたい。同じく死が間近である時期の「或阿呆の一生」まで行くと、
ちょっと読むのが辛くなるけれど、「河童」はギリギリのところで、
理知(ユーモア)と懊悩と諦観が鼎立しているように思えるのだ。
痴人の愛 (新潮文庫)

痴人の愛 (新潮文庫)

古典を題材とした近代作品といえばまず谷崎が浮かぶのであるが、
実は個人的には、あまり谷崎潤一郎は好きだ。
だが、正直中学生に勧めるのも気が引けるので、ちょっとズラして、
痴人の愛』を挙げたい(これだけでもずいぶん勧めづらいが)。
細雪』とは別の意味で『源氏物語』のテーマを引き継いだ異能の作品。
語り手の表され方の変化にニヤリ。
恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)

芥川といえば、芥川賞の創設者・菊池寛
この本は授業で読んだ「形」を収めるが、
ほかにも切れ味鋭い短編多し。もっと再評価されてもよい。