雑駁一瞥近代日本文学史・4

4 浪漫主義★
 明治20〜40年ごろ。
 欧米の思想の流入→「自我」の解放(封建的抑圧との対立)→情熱!→それが浪漫!
 …とつなげてみたものの、正直いって下に並べる作家たちを「浪漫」の一言でくくるのは、無理がある気がする。ロマンというが実は何だかわかりにくい(男のロマンとか浪漫飛行とかロマン優光とかロマンクルーとかを並べても何がなにやらわかりません。早乙女浪漫とか、もはや論外)。とりあえずは「抑圧vs人間性の解放」をテーマにするのが「浪漫主義」と一応言っておこう(もちろん抑圧に負けてしまう場合もある)

a 北村透谷★
・雑誌『文学界』★を主宰。詩もなしたが、何より評論が秀逸。近代的自我の解放を目指し、評論『人生に相渉るとは何の謂ぞ』『内部生命論』などを著すが、若くして自死。浪漫主義の看板。
▽高3で透谷の「漫罵」という作品を授業で読む流れも城北にはあるのですが、来年はどうしようかな。


b 樋口一葉
・なんと言っても『たけくらべ』★。

たけくらべ (集英社文庫)

たけくらべ (集英社文庫)

 お札にもなっているし、「たけくらべ」ぐらいは読んでほしい。とはいえ、文語調の出だしは、やや面食らうかもしれぬ。
 集英社文庫を挙げたのは、個人的に「たけくらべ」に次ぐ佳作だと思っている「十三夜」が入っているから。「にごりえ」はドロドロ感があって苦手だが、「十三夜」は結構好きです。


c 国木田独歩
・武蔵野に生きる私たちは、独歩「武蔵野」★を読むといい。武蔵野の自然を清冽な筆致に描く(かなり「西洋eye」で見ている感は強いのだけど)。今の武蔵野との相違を思うと楽しい。「武蔵野」だけならそれほど長くない。春過ぎの季節に読むと良いかも。学生のころ初期独歩の作品群のあまりうまくいっていないのを読んで(「武蔵野」は良いのだけどね)、「こうやって西洋のものを日本に移し替えようと悪戦苦闘したんだな」と思った記憶があります。

武蔵野 (新潮文庫)

武蔵野 (新潮文庫)


d 泉鏡花
・浪漫主義に入れられるが、作家活動が長く、夢幻的な世界を巧みに描くという意味では近代以降の「幻想文学」の祖といえるのでは。文学に一家言ある人のなかで泉鏡花ファン率は高い。
 代表作は「高野聖」★。個人的には「草迷宮」が好き。

高野聖 (集英社文庫)

高野聖 (集英社文庫)


 こうやって並べてみたが、あまりひとくくりにしたくなく、それぞれに特徴があります。
 次回は、日本文学史の良い意味でも悪い意味でも核となる「自然主義」です。終わりが見えない感じがありますが、残り4回ぐらいで終わります。